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保育士処遇の抜本的な改善で
専門職にふさわしい処遇と社会的地位の確立を求めます
~処遇改善等加算Ⅱに対する見解と提言~
2017年9月3日
全国民間保育園経営研究懇話会 会長 石川幸枝
2017年4月、新たな処遇改善のしくみ(=処遇改善等加算Ⅱ)が創設され、経験が7年以上の中堅保育士等に4万円、要件を満たした3年以上の経験者に5千円が加算されることになりました。このことがマスコミで大きくとりあげられ、国民や保育関係者の中には保育士処遇の大幅な底上げがはかられるものと受け止めた方も少なくありません。
しかし、「加算Ⅱ」は副主任等の役割をもつ特定の職員を対象としており、賃金水準の底上げに貢献するものではありません。そればかりか、以下のように、職員間に賃金格差や混乱をもちこむものです。
①年度により変化する児童数と職員の勤務年数が算定の基準であるため、人件費財源としては極めて不安定となり、支給水準の継続性が担保されない。
②法人内で施設間に賃金の格差が生まれ、法人の人事計画(配置・異動)や賃金体系との矛盾が避けられない。
③実際には、最低基準の1.8倍1もの保育士を配置している保育所の実態が対象職員数に反映されていないため、全職員への配分水準が低下する。
④非対象職員との月額4万円の格差の合理的説明はつかず、チームワークが不可欠な保育現場においてはその基盤が揺らぐことになる。
「加算Ⅱ」には全産業平均より月額10万円以上も低い保育士の賃金実態を改善するという観点が欠けており、抜本的な処遇改善とは言い難い内容です。そもそも、要件となっている一分野15時間・最大60時間の研修受講を、余裕のない人員配置で運営している現場で保障できるのでしょうか。このしくみは、入口からして保育現場の実態と大きく乖離していると言わざるを得ません。また、公定価格における施設・事業類型(保育所、認定こども園、幼稚園、地域型保育事業等)間の格差がさらに拡大することも見逃せません。
全国経営懇は、厳しい保育士処遇の実態を抜本的に改善させるために、以下の提言を行うとともに、保育関係者と力をあわせその実現をめざすことをここに表明するものです。
(1)「私立保育所の運営に要する費用」における保育所職員の本俸基準額格付を抜本的に改善し、保育所職員の賃金水準全体の底上げを行う。月額10万円以上の引き上げをめざし、当面、5万円の改善を行う。
(2)豊かな保育の保障と保育士の処遇改善のために、基準の1.8倍の職員を配置している保育所の実態に即し、現行の職員配置基準の大幅引き上げを行う。
(3)開所時間・日数に見合うよう、公定価格の施設・事業類型間格差を是正する。
(4)現行の処遇水準を守るために、退職手当共済制度の公的補助を継続する。
注1 最低基準の1.8倍:全国保育協議会「全国の保育所実態調査報告書2011」(2012年9月刊)のデータに基づき、村山祐一氏(元帝京大学)が試算。
印刷用(PDF版)はコチラ>>>経営懇 保育士処遇等改善加算Ⅱに対する見解と提言
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