お知らせ・新着情報
9月3~4日、新横浜国際ホテルを会場に、第20回経営懇夏季セミナーを開催しました。23都道府県から242名が参加しました
1日目「どうなる?子どもと保育 ―保育指針改定のねらいと私たちの課題―」
1日目は、保育指針改定問題を中心にして、近藤幹生さん(白梅学園大学)と渡辺雅之さん(大東文化大学)の報告から学びました。
◆指針改定と保育の自由・創造性
近藤さんは、まず保育指針改定の背景に注目すべき、と指摘しました。指針改定は、安倍内閣の教育改革全体の中に位置づいているといえます。国は幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を示すことで、保育内容も管理・統制しようとしているといえます。そうなると、保育の自主性や創造性が脅かされてしみます。そうした動きに飲み込まれるのではなく、自由な保育内容をつくることを現場でめざしていくことが重要であり、保育者自身の生きがいにもつながっていく、「自分たちの指針」をつくろう、と呼びかけました。
◆学校では道徳の教科化、対抗軸としての実践
大東文化大学の渡辺さんは、元中学校教師。そうした経験も踏まえて、小学校以降の学校現場での動きと、実践でどう跳ね返していくかを語りました。今回の学習指導要領の改訂は、政府・財界が求める人材をどう育成するかに主眼が置かれたものになっています。その一つとして、道徳が教科化されました。これは、目の前の児童・生徒に寄り添うのではなく、政府・財界の要請に基づき、学校・大人が一方的にルール・マナーや個人の生き方を押しつけるための教科化といえます。
渡辺さんは、子どもの見方や権利の観点を、授業や保育の場面で具体的に生かしていくような実践をつくっていくことが大事である、としました。
◆実践で対抗すること、さらにその先を考える
報告を受けての意見交換の中で、「指針等改定の背景をとらえつつ、それぞれが保育実践を丁寧にしていくことが大事だと思うが、それはあくまで国が示した指針の枠内のとりくみにでしかない。この枠自体を超えていく、流れを大きく変えていくことができないか」という問題提起がありました。
渡辺さんは、アメリカでの教育改革の実態とその中で立ちあがったシカゴの教員組合の運動を紹介しながら、しょうがない…とあきらめるのか、保護者や地域と手をつなぎおかしいことはおかしいと声をあげるのか、せめぎあいになっていること、そして「目の前の実践と社会全体を変える運動とを、同時に進めていく」ことが大事だ、とこたえました。
近藤さんは、身近なところで起こっている事について、一人ひとりが「自分はどう考えるのか?」と考えていくことから出発することが大事である、と話しました。そのうえで、おとな同士がきちんと議論していくことが必要ではないか、多様な意見を出しあい議論することを大事にしないで子どもの権利が守れるのか、と提起しました。
2日目「どう考える?処遇改善加算Ⅱ」
2日目は、活動交流と記念講演。活動交流では、処遇改善等加算Ⅱについて、各地の状況と私たちが求める改善の方向性について、交流しました。
静岡の(福)静岡福祉会の松本正良さんと神奈川の(福)神奈川労働福祉協会の足立堅太郎さんが、法人の対応状況や、自治体の動きについて、報告しました。そうした報告を受けて、役員会として整理した「処遇改善等加算Ⅱに対する見解と提言」を提案しました(見解と提言は4ページ)。
参加者からは、各地の自治体の姿勢・対応や進行状況、その中での問題点や法人・園として苦労していること等について発言がありました。加算Ⅱを受けるのか受けないのか、受ける場合は同職員に配分するのかなど、各地で混乱が広がっています。「少しでも改善するためにお金は必要だが、この加算は受けない方がいい、と思っている」という発言もありました。また、研修については、国の管理・統制により、研修内容の自由が奪われるのではないか、保育が大きく変えられかねない、という危惧も出されました。
最後にまとめとして、森山事務局長が今後の活動について呼びかけました。役員会としては、この見解・提言をベースに、10月に厚労省・内閣府と懇談を行います。懇談にむけては、会員園のみなさんにアンケートをお願いしました(先月のニュースで送付)。このアンケートのまとめも懇談に活用する予定です。また、全保連が中心になってすすめている国向けの請願署名活動にも、各地域で旺盛に取り組んでいくことが提起されました。
記念講演は、日本体育大学の清水雅彦さん。自民党の憲法改定案を検証し、その問題点と今後の運動の課題をお話しいただきました。
参加者の声~アンケートより
○保育指針で政府が狙っていることが「加算Ⅱ」からも見えてくる。保育に分断と企業倫理を持ち込もうとする国に怒りをもって立ち向かいたい。私たちの望む研修ができる研修センターの確立を!(大阪・園長)
○事務局長が秋の署名運動に触れていましたが、署名運動を各地で成功させるのも、私たち管理職の役割であると思う。時間をとって提案しては?(園長)
○加算Ⅱ、可能なら当面拒否がいいと思う(理事長)
○「申請しない」という論議もあっていい(大阪)
○自治体により考え方も違うことが分かった(東京)
○研修内容が不安になってきた(神奈川・理事長)
○加算Ⅱの評価はともかく、現実対応…ということかとため息も出ますが、経営懇の「見解と提言」は明快、深く共感しました(東京)
○戦後72年、国の方向性に危機感を感じる。自分たちの保育理念や内容を貫くだけではいけない、と自分達に問い直している(神奈川・園長)
○処遇改善を訴えてきた成果として加算Ⅱをとらえ、申請しないという選択肢は外した。本当の処遇改善になるように要求していきたい(福岡)
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