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2017.07.02
第20回総会終了しました

 第20回経営懇総会を6月25~26日に開催しました。1日目は保育研究所フォーラムを総会学習会1に位置付け、2日目は学習会2・総会を行いました。

1日目総会学習会1「新指針・要領は保育に何をもたらすのか」

 フォーラムでは、平沼博将氏(電気通信大学)から今回の指針・要領改訂の概要が整理され、それをうけて、東京と愛知から現場からの報告がされました。これらの報告をふまえて、大宮勇雄氏(福島大学)、小泉広子氏(桜美林大学)から、要領・指針改定をどうみるのか、法的な意味や今後の課題等が話されました。

◆子どもは評価ではなく理解を求めている

 今回の指針・要領等では、3歳以上について統一され、「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」が設定されました。この姿を到達目標として評価するような保育が行われることを懸念する声も上がっています。大宮氏は、子どもは評価を求めているのではない、理解を求めているのではないか、と提起しました。子ども一人一人に発達の特性や個性があり、寄り添い理解されることこそが子どもにとって大きな励ましになります。10の姿を目標に、計画を立て実践し評価する、という一連の流れは保育にはそぐわない、目標ありきでいいのか、と疑問を投げかけました。

◆価値観の押しつけは子どもの権利への侵害

 小泉氏は、今回の改定の背景を法的な観点から整理し、「新教育基本法体制」に幼稚園・保育所を組み込むものである、と位置付けました(2006年改正の新教育基本法では、第2条に「我が国と郷土を愛する態度」などの教育目標を掲げた。教育目標を法律によって強制すべきでない、との議論もある。)

そのうえで、国旗・国歌や10の姿などをもとに、子どもに一方的に価値を押しつけることは、子どもの権利の侵害である、と指摘しました。保育者や教師ではなく、直接子どもをターゲットに、国が特定の子ども像を押しつけようとするところまできている、と危機感を示しました。

この指摘は、私たち大人自身が乳幼児の権利をどうとらえ、日々の保育や保育園運営の中でどう保障するのか、という問いかけでもあるといえます。そうした点も踏まえつつ、どう新指針・要領に対峙していくのか、保護者も含め、法人・園ごとに考えあっていくことが必要です。

2日目総会学習会2「公定価格・配置基準の改善と新たな処遇改善策への対応」

◆「処遇改善等加算Ⅱ」~どうみる?どう対応する?
 学習会2は、この間、記者会見・国との懇談等でまとめてきた改善要望の内容や、調査研究部が整理した加算ⅡのQ&Aをもとに役員が講師となり、学習を行いました。
 今年度、国が新しく創設した「処遇改善等加算Ⅱ」の内容と対応について、役員会の調査研究部が作成した資料をもとに役員より報告しました。加算Ⅱの概要と問題点を整理した報告をうけて、質問や報告が相次ぎました。「あまりに問題が多いので、この加算は受けないと表明したところ、市が相談に乗るから受けてほしいと要請された」(山梨)、「名古屋市は公私間格差是正として運営費補給金制度があり、現在も公立・私立の賃金水準を同等に保っている。名古屋市としては加算Ⅱを実施しない、と言っていたが、実施するかもという情報もあり不透明」(愛知)、「賃金が低くてもみんな一緒だから、団結してこれたが、あまりに不平等な加算で、職場がまとまらなくなる。どう考えればいいか悩む」(大阪)、「加算Ⅱは、『処遇改善』と言っていいのか?現場に分断を持ち込む『攻撃』ではないのか」(東京)、といった声も出されました。国が提示している施策内容を正確に把握したうえで、それぞれの法人・園がどう考え対応するのか迫られています。

◆問題点は
 経営懇では、役員会・調査研究部で独自のQ&Aを作成すると同時に、今回の施策の問題点について指摘してきました。主な問題点として、下記の4点を上げて整理しています。
①処遇改善の継続性が担保されない
②法人内で施設間に格差が生まれる
③職員配置の実際が反映されない
④協同の基盤が揺らぐ 
 こうした問題点を見てみれば、今回の「処遇改善等加算Ⅱ」は、抜本的な処遇改善の施策とはいいがたいものであることは明らかです。経営懇としては、実態に基づいた職員配置基準引き上げと公定価格の基本単価の大幅引き上げを厚労省・内閣府に要請してきました。加算ではなく、職員全体の処遇を底上げできるよう、引き続き、要請・懇談等を行っていく予定です。各地域でも、園長会で交流したり、自治体と懇談したりと、現場で問題になっていることを国・自治体に伝えていくことが重要です。

第20回総会~会員園500園を超える!さらに仲間を広げよう!

 役員からの議案提案を受け、討論では8名の発言がありました。兵庫からは、社会福祉法人夢工房の事件や姫路の認定こども園の認定取り消し問題など、量拡大の一方で質の確保が置き去りにされている実態や社会福祉法人の在り方について自分たちが考える機会としてとらえよう、と発言がありました。東京経営懇から研修を中心にした活動づくり、京都経営懇から、市立病院の院内保育所の委託問題で裁判に訴えたたかっている報告、愛知からは保育の魅力や楽しさを保育学生に伝える企画で保育士確保の工夫をしている実践が、それぞれ報告されました。
 平和・憲法をめぐって、戦争中に子ども時代を過ごした体験を交えての発言、自分の言葉で平和への思いを発信し続けている実践、今すぐ一人一人が動けるよう行動提起が必要との発言もありました。
 8月に合研集会を開催する埼玉から、合研集会を通じて新たな保育園ともつながりができつつある、合研は組織拡大のチャンスでもある、と合研参加を呼びかけつつ報告されました。また、それぞれの会員園が自分の周りの園に入会を呼びかけ仲間を広げていこう、という役員からの発言もありました。
 最後に、特別決議『子どもたちの未来のために 私たちは「日本国憲法」を守る』を採択し、総会を終えました。