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2018.02.27
保育所はもうかっているのか?公定価格「適正化」論の動き

 2017年12月22日に、保育研究所主催の公開研究会『保育園は本当に儲かっているのか』が開催されました。この研究会は、財務省が「保育所施設は中小企業等と比べ儲かっているので補助金を適正化すべき」との提案したことを受けて、急遽開催されたものです。この数字(保育所の収支差額7.6%)は、9月の子ども・子育て会議で出された2015(平成27)年度の経営実態調査によるものです。ちなみに翌年の2016(平成28)年度の調査では、7.6%が一気に2.5%も下がって、5.1%になっています。公開研究会では、税理士さんを講師に招き、財務省の議論の問題点や2015年から2016年で2.5%も減少している背景、保育園側の課題等についてお話しいただきました。 

公定価格「適正化」論議のその後

 その後、「適正化」の動きは、2018年度は見送られましたが、決してこの論議自体が消滅したわけではありません。今後も様々な形で議論を再燃させ、財政支出を減らそうとする動きが出てくることが予想されます。保育園の運営・経営に欠かせないものは何なのか、特に乳幼児期の子どもの保育を行う上で重要な安全の確保や、一人ひとりの育ちに寄り添う保育内容づくり、保育の質向上等の視点から、現在の公定価格でも十分ではないということを、明らかにしていくことが重要です。

公開研究会に参加した会員の報告

*空調設備改修に800万…実態を発信しよう

事業収支差額が多いというが、それを低い保育士の給与改善にあてられないのはなぜか。それは、保育園を持続的に運営していくための資金だからである。私が運営に携わっている施設も20年目を迎え、空調施設改修に800万円かかった。これは、法人収支差額1年分に近い。こうした施設設備等のための費用が必要なのだ。身近なところから発信するという持田さんの話を実践していきたい。(神奈川)

*今後も人件費は増加、公定価格引き上げが必要

2017年9月の子ども・子育て会議で保育所の収支差額が7.6%であり、中小企業の2.4%と比べて高いとの報道がされた。この報道で、保育所は儲かっているように受け止められている。2015年度決算での収支差額は7.6%だったが、2016年度は5.1%に下がった。1年間で2.5%下がったのは、利用者数の減少、標準時間・短時間の厳格化、補助金の削減、人件費率の上昇にある。大規模修繕や建て替え費用を考えると、収支差額5%でも少ないくらいである。そもそも、営利目的の中小企業と福祉事業を行っている保育所を同列に語ることに意味があるのか。今後も、職員確保のため、人件費は増加していく。保育所の経営を安定化させていくために、公定価格を大幅に引き上げる必要がある。(愛知・理事長)

*保育は福祉事業、国・財務省につきつけたい

保育所がもうかっている…という財務省からの提案がだされて、またか、と思う。そもそも、中小企業と比較することがおかしい。保育所は、第二種社会福祉事業としての公益性が求められ、利益追求するものではないのだから。中小企業そのものも3社に2社が赤字であり、統計数値が低いところが中小企業だったので、結果ありきで比較対照されているというお話をきき、もっともだと思う。施設設備で補助金が将来的になくなるのであれば、当然、法人がその分も積立せざるをえず、その点をやはり財務省や国と、はっきりさせないといけないと、論議すればするほどに思いました。(大阪)

*運営・経営の実態を発信することが重要

国の資料で、2015年(平成27)年度7.6%、2016(平成28)年度5.1%とありますが、その欄外に、<参考>として、あえて小さな字で公定価格のみの場合の収支差額について、2.2%と書いている表を見て、あきらかに決論が先にありきで、数字をだしているとしか考えられません。どうして収支差額を残さないといけないのか、その必要性や建て替えなどの問題を、リアルに数字で明らかにすることで、職員や親、地域に伝えていく必要性を感じました。(大阪・園長)