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2015.03.20
公定価格~加算要件が、少しずつ明らかに

 2015年3月10日に、政府は子ども・子育て支援新制度の自治体向け説明会を開催し、「特定教育・保育等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項(案)」を示しました。この資料で、施設・事業ごとに、公定価格の算出の仕方、各種加算の要件等が、これまでよりも具体的に示されるようになりました。
 資料(抜粋)はこちら>>>特定教育・保育等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項(案)の送付について(2015年3月10日)

◆私立保育所の委託費の構成
 私立保育所の収入は、公定価格だけではありません。園の収入は、(公定価格の総計)+(国庫補助金)+(自治体単独補助)の合計になります。今回、国庫補助の延長保育補助の基本分や処遇改善の臨時特例交付金などの国庫補助がなくなり、公定価格に組み込まれるので、一見収入が大幅に増えるようなことが起こるかもしれませんが、これまであった国庫補助が減るので、その状況を見極めることが必要です。
 また、私立保育所は、公定価格満額が委託費として支弁されますが、認定こども園などの直接契約の施設・事業者には、公定価格から利用者負担額を控除した額が給付費として支弁されます。保育所に支弁する額を給付費としている市町村がありますが、それは誤りです。さらに、その支弁は、当月内になされるのが原則です。

◆各項目にそって

●基本分単価 この単価には、その保育に必要な基礎的・共通的な経費として、事務費(人件費+管理費)と事業費を、地域・定員・認定・年齢・保育必要量等の区分に応じた子ども1人当たりの月額として設定したものです。人件費の中には、最低基準にもとづく必要保育士数や規模に応じた職員の増や調理員の配置を補償する額が盛り込まれていると説明されていますが、積算根拠となる単価額は示されていません。

●基本加算部分 
 処遇改善
は、従前の民改費同様に職員の勤務平均勤続年数に応じて設定されます。職員の経験として加えることができる前歴の範囲が拡大され、単独補助を受けていた認可外施設等の勤務経験も対象になります。

 ※処遇改善等加算のイメージ図はこちら(2015年1月23日自治体向け説明会資料2-3、最後のページ(13枚目)をごらんください。
さらに加算率処遇改善のイメージ図のように、これまでの2~12%の加算に加え、賃金改善要件分として3%(11年以上では4%)が上乗せされます。
 ただしこの上乗せ分は、確実に職員の処遇改善にために使用すべきものなので、賃金改善要件が設定され、その要件に該当しなければ加算されません。さらに、キャリアパス要件を満たさない場合は、上乗せ分が1%減算されます。賃金改善要件については、この2年間実施された処遇改善臨時特例交付金の要件と同様といえますが、新たなキャリアパス要件は未だその内容が明らかにされていません。今回の資料でも別に定めるとしか記載がありません。公定価格に関するFAQでも「具体的には都道府県が定めるスケジュールによる」とした説明にとどまっています。

●3歳児配置改善加算は、実際の3歳児における保育士配置を問うのではなく、保育士配置数の算定にあたって、3歳児について最低基準の20対1でなく15対1で計算し、園の保育士総数がそれを上回っていれば算要件に合致するとするようです。

●減価償却加算は、施設整備と改修に関わる国庫補助との選択制なので、国庫補助による整備を行った施設は対象外です。ただし、国庫補助を受けていても、一定年数経過していて、さらに新たに示された要件に適合するとこの加算が受けられることが明らかになりました。もっとも、一定期間とは何年なのかについては示されていません。また、賃貸の施設は、賃借料加算の対象になります。休日保育加算は、休日保育を実施した施設に、前年度の休日保育利用児童数に応じて単価が設定されます。夜間保育加算は、夜間保育所として認可された施設が対象です。

●特定加算部分 本額(月額や年間額)が示された上で、子ども数で割ることが基本ですが、冷暖房費は、すでに子どもの1人分の単価が示されているので、すべての施設でそのまま加算されます。

●入所児童処遇特別加算、小学校接続加算などは新たな加算ですが、年1回3月に付加されるものです。加算を受けるための要件が示されているので資料の26~28頁を確認して下さい。

●調整(減算)など 加算とは別に、土曜日を状態として閉所する場合や、2年間連続定員を120%超えして入所させていた場合は、減額措置がありますので注意が必要です。

◆基本的な問題点 一般的な加算を加えても、短時間認定の公定価格は、3歳児以外は現状の保育単価よりも減額といえます。従って短時間児が多い園は、現状より減収になる可能性があります。
 標準時間児の単価は、保育単価よりも改善されたとなっていますが、その多くの部分が、これまで延長保育補助の基本分として各園に年間459万円程度が支給されていたものが、子ども1人あたりの月額として細分化して振り分けられているので、実質的な改善はごくわずかといえます。また、処遇改善で3%アップと宣伝されていますが、すでに臨時特例交付金で2.85%アップは実施済みなので、これも目立った増収とはいえないようです。
 また、すべての施設で同じ加算があるわけではない点も問題です。たとえば、幼稚園と認定こども園に通う1号認定の子どもには、チーム保育加配加算(最高6人まで)、学級編成調整加配加算などがありますが、保育所や認定こども園の2号認定の子どもにはこの加算はなく、明らかな格差といえます。
また、小規模保育事業等には、障害児保育加算がありますが、保育所は、地方自治体の単独補助でも対応が原則なので、公定価格での加算はありません。